高専を卒業後、就職するか、大学に編入するか、それとも専攻科に進学するか──。
多くの選択肢の中で迷っている高専生の方も多いのではないでしょうか?
特に、高専専攻科への進学については、判断が難しい選択肢の一つです。
この記事では、高専専攻科進学を考える上で重要なポイントを詳しく解説していきます。

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本科卒で就職しない場合、考えるべきことがたくさんあるよね。
これから紹介する内容は、皆さんが自分の将来を見据えて最適な選択をするための指針となるはずです。
この記事を通じて、皆さん一人ひとりが自分に合った進路を見つける手助けになれば幸いです。
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高専専攻科とは?
高専専攻科は、高専本科の5年間の教育を基礎として、さらに2年間の高度な専門教育を目的として、1992年に設置されました。
当初はわずか数校からのスタートでしたが、現在では全国の国立高専すべてに設置されています。
専攻科では、本科で学んだ知識をさらに深め、研究活動を通してより専門的で実践的な内容を学びます。
高専専攻科に進学するかどうかの判断基準
高専専攻科への進学は有力な選択肢の一つではありますが、他の選択肢も含めて考えると、迷いが出てくることがあるかもしれません。
下記の3つの要素について、専攻科に進学した方がいいのかどうかの判断材料にしてください。
- 将来進みたい方向と専攻科の学びが一致しているか
- 専門分野への興味や熱意があるか
- 学費の準備はできているか
専攻科に進んだ場合、そのまま卒業して就職するケースと、大学院に進学するケースがあります。
しかし、どちらにしても、目指す職業や業界と専門分野が一致していることが重要になってきます。
専門分野の学びがあと2年間続き、さらには就職にまで影響を及ぼすことをよく考えてみてください。
また、専攻科への進学には当然、学費の準備が必要です。



成績については、上位50%以上なら推薦で専攻科に行けるみたい。



やる気、成績、学費の準備次第で判断ってことかな…。
高専専攻科のメリット
高専専攻科に進学するメリットをお伝えします。
慣れ親しんだ環境で効率的に学ぶことができる
本科から専攻科に進学する場合、環境の変化が少ないことが大きな特徴として挙げられます。
- 環境の変化が少ない
- 顔見知りの同級生や教員と過ごせる
- これまでの研究をさらに深められる
専攻科では本科で学んだ専門について、同じテーマで研究を続けることができます。
また、顔見知りの同級生や先生とさらに2年間一緒に過ごせるので、安心感がありますね。
大学編入試験などに煩わされずに慣れ親しんだ高専でじっくり勉強を続けられるので、環境の変化があまり好きでない人には大きなメリットです。
学士が取得できる
専攻科の過程を修了し、大学評価・学位授与機構が定めた要件を満たした場合、同機構に申請することで学士の学位を取得できます。
学士は4年制大学の学部卒業生と同じ扱いとなるため、就職や進学の選択肢が広がります。
大学院への進学が可能
学士の学位を取得することによって、大学院に進学する道が開けます。
多くの大学院が高専専攻科からの入学者を受け入れており、整った研究設備で、より高度な研究を続けることができます。
研究職や高度専門職を目指す場合、本科卒だけでは学歴に不足があるも言われています。専攻科から大学院への進学は非常に大きな強みになるでしょう。
就職先の選択肢が広がる
専攻科で深めた専門知識や研究経験によって、より専門性の高い職種への道が開けやすくなります。
また、学士号取得により、本科卒業時よりも幅広い職種や企業にアプローチできるようになります。
つまり、大卒しか応募できない職種にエントリーすることができるようになります。
高専専攻科のデメリット
高専専攻科に進む場合、メリットだけではありません。
デメリットも理解した上で、進学を検討しましょう。
学費がさらに2年かかる
判断基準のセクションでも軽く触れましたが、専攻科進学には学費が必要です。
学費は本科と同じ年間23万5千円で、大学編入に比較すると安いです。しかし、本科からそのまま就職する場合と比べると、2年間の収入機会を逃すことになります。
必要であれば奨学金制度の利用も検討しましょう。
人間関係&環境が閉鎖的
専攻科は、基本的に高専本科からの継続となるため、新しい人間関係や環境の変化が望めません。
また、高専が設置されている場所は人里離れていることも多いため、生活や人間関係やどうしても閉鎖的になりがちです。
本科で一緒だったクラスメイトは、さまざまな企業への就職や大学編入など、自分との境遇に違いが出てくる時期でもあります。
周囲との比較をせずに、将来を見据えて2年間頑張っていく意気込みが求められます。
社会的認知度が低い
高専専攻科の学歴は、一般的な4年制大学と比べてまだ社会的認知度が低い面があります。
就職活動の際、相手先企業が高専のことを知らない場合、高専や専攻科についていちいち説明が必要になることがあるかもしれません。
ただし、理解さえしてもらえれば、専門性や実践力を重視する企業からは高い評価を得ることができるでしょう。
専攻科卒は中途半端?
高専設立当初の1960年代は大半の人が高卒であり、大学に進学する人はまれでした。
高卒よりさらに2年間多く学び、しかも大卒と同程度の知識や技術を有する人材として、当時の高専卒生は産業界から引っ張りだこでした。
ところが、今や「大学全入時代」と言われ、誰もが大学に行く時代。
専攻科卒の地位は相対的に低くなりつつあるとか、専攻科に行くのなら、大学院まで行った方がいいと言われるようになりました。
とはいえ、依然として高専卒や高専専攻科卒が、企業からの評価が高いのは事実です。
高専専攻科進学後の学び
高専専攻科では、以下のような学びが待っています。
- 2年間の特別研究
- プレゼンテーション&論文執筆
- 産学連携の長期インターンシップ
専攻科では自分の専門科目にもとづいた特別研究を行い、研究成果の総まとめとして論文にまとめます。
多くの学生が数度にわたる特別研究発表を経験し、就活の場でも必要となるプレゼンテーション能力を磨きます。
専攻科では教員から研究指導や就職について、多くのアドバイスを受けることもできるでしょう。ただし、本科とは異なり、本人のやる気と自主性が問われます。
また、産学連携プロジェクトや長期インターンシップを通じて、実社会での経験を積む機会も豊富です。
高専専攻科の就職活動
高専専攻科生の就職活動についてです。
- 就職率が高い(ほぼ100%)
- ほぼ全ての学科が長期インターンシップを単位化
- 専門性を活かせる職種への就職が多い
- 自由応募では学部卒生と同じ土俵で戦うことに。学校推薦もあり
就職活動は通常、専攻科1年の後半から始まります。多くの学生が長期インターンシップに参加し、企業理解を深めています。
実際にその会社で働いてみることで、自己分析や自分の方向性がはっきりし、その後の就職活動に非常に役立つとの声が多いです。
- 早めの準備:業界研究や自己分析を早めに始める
- 研究活動のアピール:特別研究の内容を分かりやすく説明できるようにする
- コミュニケーション能力の向上:面接対策を十分に行う
- 教員からのサポート活用:推薦状や面接対策など、教員のサポートを積極的に受ける
高専専攻科生は、専門性と実践力を武器に、自分の強みを活かせる企業選びを行いましょう。
前もって計画的に準備を行うことや、積極的な行動力が、就活成功への鍵となります。
高専専攻科の学費と奨学金制度について
進学するためには無視できない学費の問題。
高専専攻科の学費と、奨学金制度について解説します。
高専専攻科の学費
以下の表で、高専(本科・専攻科)と大学の学費を比較してみましょう。
高専本科 | 高専専攻科 | 国立大学 | 私立大学平均 | |
---|---|---|---|---|
入学金 | 84,600円 | 84,600円 | 282,000円 | 240,000円 |
授業料(年額) | 234,600円 | 234,600円 | 535,800円 | 1,100,000円 |
合計(卒業まで)※ | 1,257,600円 | 1,257,600円 | 2,425、200円 | 4,640,000円 |
高専専攻科は、大学と比べると学費が抑えられています。
とはいえ、実際には授業料だけでなく、学生会費や後援会費、教科書代その他の費用がかかってきます。学費プラス3割増し程度を準備しておく必要があるでしょう。
専攻科が利用できる各種奨学金
高専専攻科生が利用できる主な奨学金制度は以下の通りです。
日本学生支援機構の奨学金
日本学生支援機構奨学金は、高等教育機関を対象として、国が実施している奨学金制度です。
大学でも同じ制度を利用しますが、高専専攻科も対象です。要件に当てはまる場合は、審査を経て利用できます。
【高等教育の修学支援新制度(授業用減免+給付奨学金)】
- 授業料減免と給付型奨学金の組み合わせ
- 給付型奨学金は月額最大34,200円(家計収入による)
【貸与型奨学金】
- 将来返還しなければならない「借りる」奨学金です。
- 学力・人物が審査され、奨学生として適格であれば採用されます。
申請は春(4月頃)と秋(9月頃)です。
国立高専が実施している奨学金
国立高専が、一般企業や財団法人の支援を得て実施している奨学金です。
- ニコン奨学金
- 公益財団法人ウシオ財団奨学金
- 一般財団法人上田記念財団奨学金
奨学金の募集時期や申請方法は、各高専の学生課や奨学金担当窓口に確認してください。
経済状況や成績などの条件を満たす必要がありますが、積極的に活用することで学業に専念できる環境を整えることができます。
専攻科か大学編入か、迷ったらどうする?
専攻科進学について解説してきましたが、実は大学編入とどちらにするか、決めかねている人もいるのではないでしょうか。
以下の判断基準を参考に、自分に合った進路を選びましょう。
【学びの環境と内容】
- 専攻科:
- 慣れた環境で学習を継続
- 本科からの研究テーマを深められる
- 実践的な技術教育に重点
- 大学編入:
- 新しい環境での学び
- より幅広い分野の学習機会
- 理論的な学習にも重点
【取得できる学位】
- 専攻科:学士(工学)
- 大学編入:学士(編入先の学部による)
両者とも学士号取得が可能ですが、専門分野や取得方法が異なります。
【期間とコスト】
- 専攻科:2年間、比較的低コスト
- 大学編入:2〜3年間、専攻科より高コスト
経済的な面では専攻科が有利ですが、大学生活を経験したい場合は編入も検討価値があります。
【就職への影響】
- 専攻科:
- 即戦力として評価が高い
- 研究開発職への就職が多い
- 大学編入:
- 幅広い職種への道が開ける
- 大企業の総合職などにも可能性
大学卒や大学院卒と競合する専攻科卒の研究開発職への就職ですが、思っているほど少ないわけではありません。
(企業規模にもよります)
競争が激しくなっているのは事実ですが、学歴が全てを決定するのではなく、結局は自分の意識の持ち方や、過ごし方次第という面もあります。
もちろん企業の採用方針によって評価が異なるため、まずは志望業界のリサーチをしっかり行ってくださいね。
【将来のキャリアビジョン】
とはいえ──以下のような観点があることも考慮してみましょう。
- 研究者や高度専門職を目指す場合、大学編入後に大学院進学という選択肢も
- 実務的な技術者を目指す場合は専攻科も十分な選択肢
【結論】
- これまでの専門を同じ環境で極めたい場合は専攻科
- 新しい分野・環境にチャレンジしたい場合は大学編入
最終的には、自身の興味、目標、経済状況を総合的に考慮して判断しましょう。
両方のオープンキャンパスや説明会に参加し、実際の雰囲気を体感することも有効です。また、先輩や教員にアドバイスを求めるのも良いでしょう。
選択に迷った場合は、5年間の高専での学びを振り返り、自分が本当にやりたいことは何かを深く考えることが大切です。
どちらを選んでも、そこでの学びを最大限に活かすことが、思い描いた将来を引き寄せるために有効です。
まとめ
高専専攻科の進学を迷っている方に向けて、判断基準やメリット・デメリット、学費についてお伝えしました。
さまざまな選択肢があるからこそ、どのような進路が自分に最適なのか迷ってしまいますよね。また、望んでいても難しいことも中にはあります。
周囲の人にも相談しながら、ぜひ自分にとって悔いのない進路を選んでください。
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