高等専門学校の最終学歴とは? 高専についての概要を解説

高等専門学校(高専)は国によって定められ、産業界の即戦力として、実践的な学びと専門的な知識を得ることができる教育機関です。

高専について調べると、一般高校とは異なる独自のカリキュラムに魅力を感じる方も多いでしょう。

しかし、「高専の最終学歴はどのように評価されるのか?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

これから高専への進学を考えている学生さんはもちろん、保護者の方にとっても、高専の学歴が社会でどう評価されているのかは大きな関心事ではないでしょうか。

この記事では、高専卒の学歴について、また、高専卒業後の就職や進路についての概要を解説しています。

この記事を読んでわかること
  • 高専の学歴について、社会での位置づけを知ることができる
  • 高専の教育システムの概要を理解できる
  • 高専卒業後の進路やキャリアパスについて知ることができる
目次

高専の学歴について

高専卒業生は、一般的に「短期大学卒業」や「専門学校卒業」と同等とされます。

しかし、近年では高専卒業生がその後の進学やキャリアにおいて、より高い評価を受けるケースも増えてきています。

高専卒の最終学歴はどういう位置づけ?

高専を卒業すると得られる学位は「準学士」です。

高専は5年間の一貫教育です。中学卒業後に高校に進学、さらに短大に進んで卒業するのと同様に、5年間という時間を過ごします。つまり、高専卒は短大卒と同程度と言えます。

高専卒業後にさらに2年間「専攻科」で学んで修了する場合は、4年制大学と同程度の「学士」の学位を得ることができます。ただし、大学と違うのは自動的に得られるわけではなく、申請と審査を経て学士の学位を取得します。

高等教育機関で得られる主な学位
高等専門学校
(本科)
準学士
高等専門学校
(専攻科)
学士 
短期大学短期大学士 
4年制大学学士
大学院
(修士課程 / 博士前期課程)
修士
大学院
(博士課程 / 博士後期課程)
博士

高専は学校教育法において、大学と同じ「高等教育機関」に分類されています。

一方、認可を受けた専門学校を卒業した場合は、高卒扱いではなく「専門士」や「高度専門士」という扱いになります。

高専のメリットと課題

産業界からの評価が非常に高く、就職率が100%に近いことが高専卒のメリットです。

職業に結びつく専門的な内容に特化して学べる教育システムは、普通高校では得られない魅力です。

「得意なことだけをしていたい」という学生さんにも適した環境です。

しかし、一方で、高専への進学率は1%に満たず、一般社会での認知度は決して高くはありません。

また、同じ分野を学ぶなら、はじめから大学に進学した方が社会の認知度も高く、就職後の給与などの待遇面でも差があるケースも多いようです。

これらのメリットやデメリットを理解した上で、中学のできるだけ早い段階で、高専を受験するかどうかを決めていく必要があります。

高専の教育システム

高専は中学を卒業した方が入学することができる、5年制(商船学科は5年6カ月)の学校です。

国公私立あわせて高専の数は全国で58校ですが、内訳は、国立が51校、公立が3校、私立が4校となっています(令和5年度)。

高専のカリキュラムと学科

各学校ごとに学べる学科が異なりますが、大きくは工業系と商船系の学科に分かれ、ごく限られた学校では文系学科があります。

高専には「一般科目」と「専門科目」があり、1・2年生の間は数学・理科・社会・国語・英語などの一般科目を、学年が進むにつれ、専門分野の学びを深めていくようにカリキュラムが組まれています。

一般科目数学・物理・科学・英語・国語・社会・音楽・体育 等
専門学科電気・電子系学科、機械系・材料系学科、情報系学科、建設系・建築系学科、化学系・生物系学科、商船系学科、複合系学科、文系学科(ビジネス・経営系)

専門学科については、主に上の表のいずれかを自分の専門分野とします。

寮について

また、各高専には寮が備えられています。

自分の進みたい分野の学科を設置している高専が近隣にない場合は、寮生活をしながら学校に通うことになります。

寮については、全寮制と定められている高専、通えない学生だけが入寮する高専など、学校によって異なりますので、詳しくは各高専のサイトをご覧ください。

高専への進学を希望する場合は、将来どの専門分野に進みたいかをイメージし、早い段階から情報収集をして高専受験に備えましょう。

高専卒業後の就職について

高専卒業後の就職状況についてみていきましょう。

高専卒業者の就職状況

高専卒業者の約6割が就職の道を選んでいます。
(4割は進学)

そして、就職希望者の就職率はほぼ100%、求人倍率は20倍を超えています。

とはいえ、給与面などの待遇については、大卒の方が有利であるというのがこれまでの一般的な流れでした。

しかし、最近は必ずしも高専卒業者が大卒よりも不利であるとは言えない流れも出てきています。

国立高等専門学校機構のサイトに掲載されている内容です↓

高専卒業者・修了者に対する企業の評価は高く、年間を通して多くの求人が寄せられます。
また給与面でも、新卒採用時からその評価を反映している企業もあります。
SMBC日興証券株式会社は、2025年4月入社から高専(本科)卒業生の新卒採用を開始し、給与や配属先などの待遇を大学卒と同条件としています。また、さくらインターネット株式会社では、高専(本科)・大学等卒業生の初任給を同額としています。

引用元:国立高等専門学校機構

高専卒業者の主な就職先

高専卒業者の主な就職先について、実際に令和5年のデータを見てみましょう。

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高専卒業者の主な就職先(令和4年度本科卒業者)
旭化成株式会社株式会社FIXER中国電力ネットワーク株式会社
株式会社メンバーズ東海旅客鉄道株式会社日東電工株式会社
国土交通省関西電力株式会社キヤノンメディカルシステムズ
株式会社
京セラ株式会社ダイキン工業株式会社東京電力ホールディングス株式会社
サントリープロダクツ株式会社ENEOS株式会社トーテックアメニティ株式会社
中部電力株式会社富士電機株式会社浜松ホトニクス株式会社
大阪瓦斯株式会社四国電力株式会社
出典:国立高等専門学校機構

製造業、電気・ガス・水道業、情報通信業、建設、学術研究、専門・技術サービス業などが主な業種となっています。

表からもわかるように、高専卒業者は大企業に就職しているケースがほとんどです。

学費について

国立高専の授業料は文部科学省で決められており、入学金約8万5千円、授業料は年間約23万4,600円、合わせて5年間で約126万円です。

そのほか、教科書代、寮費(入寮する場合)、学生会費、食費などの諸経費がかかります。

世帯年収が一定の要件を満たす場合は、「高等学校等就学支援金制度」により、入学から36カ月間(1~3年)は授業料の助成を受けることができます。

さらに、4年生・5年生については、世帯年収・学業基準を満たすことにより、国の制度である「日本学生支援機構」の奨学金を受けることができます。

大学への編入や大学院進学について

高専を卒業者した後、専攻科へ進む人は約15%、大学へ編入する人の割合は約25%です。

大学へ編入した人のうち8割が国立大学に進学し、旧帝大や有名国立大学への実績も毎年多数あります。

一方、さらに勉学や研究を深めたい場合は、その先の大学院という選択肢もあります。

大学院に進むのは、研究者を目指したり、シンクタンクに就職する場合などです。

まとめ

  • 高専本科卒業は「準学士」
  • 高専専攻科修了は「学士」

高専についての概要をお伝えしました。

高専は全国で約6万人と、高校に比べて通う人口が少なく、認知度も決して高くはありません。

しかし、5年間の一貫教育で専門的な学びと実践を通して、内容の濃い、充実した学生生活を送ることができるでしょう。

高専に行って何を学びたいのかをイメージし、その後に続く進路について、じっくりと考えてみてください。きっと自分に合った選択肢が見つかるはずです。

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