2025年度からスタートする、多子世帯の授業料無償化。
ニュースなどで騒がれているものの、詳細についてはよくわからないという方も多いのではないでしょうか。

私は3人きょうだいなの。
高専はどうなるのか、学校に聞いてきてってお母さんに言われたわ。



僕は一人っ子だから関係ないかな。
結論からお伝えすると、高専も多子世帯の授業料無償化の対象です。
扶養している子どもの数が3人以上の世帯は、年収にかかわらず、授業料減免額の満額まで支援を受けることができます。
ただし、制度を利用するためには注意すべき点がいくつかあります。
この記事では、対象となる方が漏れることなく制度の恩恵を受けることができるよう、制度の概要をわかりやすく解説しています。
多子世帯について知りたいと思っている方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
※記事執筆中の2024年現在においては、おおよそのことは決定しているものの、まだ制度の全容は発表されていません。2025年2月頃に文部科学省より正式発表され次第、この記事も修正を加えていきますが、現時点でわかっている範囲になることをご了承ください。
2025/2/12 追記しました。
◆ 追加情報 ◆ の表記で、以下の情報を追加しています。
「多子世帯」や「授業料無償化」ってどういう意味?
このところ「多子世帯」や「授業料無償化」という言葉が頻繁に聞かれるようになりました。
まずはこの2つの言葉の意味を解説していきます。
多子世帯とは?
多子世帯:子ども3人以上の世帯
※ただし、条件あり


多子世帯とは、子どもの数が3人以上のご家庭のことです。
ただし、以下のような条件があります。
- 保護者が子どもを3人同時に扶養している間は、支援対象となる
- 上のきょうだいが就職などで保護者の扶養から外れた場合は、支援対象外となる
つまり、この制度は単に「子どもの数が3人以上」というだけはなく、保護者の方が子どもを3人以上同時に扶養しているかどうかが大きなポイントとなってきます。
ですので、子どもが扶養から外れた社会人である場合は対象外です。
ちなみにその多子世帯というのがいつ時点の話かということですが、
- 2025年春:2023年12月31日の住民税課税情報
- 2025年秋:2024年12月31日の住民税課税情報
となっています。
扶養する子の範囲について
- 実子・養子・生計維持者より年下の扶養親族
- 課税情報に反映されていない「新たに出生した実子」などを含む
「授業料無償化」とは?
授業料は、国が定める一定の額まで無償
授業料は基本的に学校によってそれぞれ異なるため、「一定の額まで」国が支援してくれます。それを超える範囲については、各ご家庭からの支払いが必要となります。
よって、正確には「(完全)無償化」ではなく「支援」と言った方が良いかもしれませんね。
公立と私立では授業料が大きく異なるため、支援額が異なります。具体的な金額については後ほどご説明していきます。
授業料無償化の恩恵を受けるための要件は?
あなたのご家庭が「多子世帯」に当てはまるかどうかの判断は、だいたいついたでしょうか。
しかし、あなたのご家庭が実際に多子世帯にあたるかどうかの判定は、学校ではなく日本学生支援機構がマイナンバーを通じて行います。高専では多子世帯かどうかの判定はできませんのでご注意ください。
つまり、結論からお伝えすると授業料無償化は対象者に対して勝手になされるものではなく、申請が必要です。
ここでは、そのための具体的な要件やアクションをご紹介していきます。
申請に必要な要件は3つです。
高専は4年生・5年生が対象
2025年から始まる授業料の無償化は、大学などの高等教育機関を対象としていますが、高専の場合は4~5年生がその対象です。
高専1~3年生までは「高等学校等就学支援金制度」という制度があるので、そちらをご覧ください。
給付奨学金を申し込む必要がある
2025年度スタートの授業料無償化(多子世帯)の恩恵を受けるには、給付奨学金を申し込む必要があります。



給付奨学金って?



日本学生支援機構の奨学金のことみたいよ。
「日本学生支援機構(JASSO)」の奨学金は、大学・短期大学・高等専門学校(4年生以上)・専修学校(専門課程)を対象としています。
授業料無償化は、この日本学生支援機構の「給付型奨学金」制度を通して実施されます。
(日本学生支援機構は文部科学省の所管であるため)
「日本学生支援機構の給付型奨学金」は、「高等教育の修学支援新制度」と同じ、つまり同義語と思っていただいて結構です。
制度を詳しく解説するとややこしいので割愛しますが、ここでは一つだけ覚えて帰ってください↓
授業料無償化を受けたければ、日本学生支援機構の「給付型奨学金」を申し込む必要がある
日本学生支援機構の奨学金は、毎年春と秋に申請することができます。
2025年4月以降に高専4年、5年に進級する方は、詳しくは通っている高専の学生課や奨学金窓口で聞いてみてください。
成績の基準を満たしている必要がある
授業料無償化の恩恵を受けるには奨学金制度を通す必要があることをお伝えしましたが、奨学金である以上、一定の成績を修めている必要があります。



それで、必要な成績はどれくらいなのかしら……。
日本学生支援機構では、以下のような記載があります。
申込時点で(1)又は(2)のいずれかに該当する必要があります。(該当しない人は採用されません)
(1)高等専門学校における全履修科目の評定平均値が、5段階評価で3.5以上であること(※1)(2)将来、社会で自立し、及び活躍する目標をもって、進学しようとする大学等における学修意欲を有すること(※2)
(※1)評定平均による5段階評価をしていない学校にあっては、これに準ずる学習成績とします。
引用元:日本学生支援機構 給付奨学金案内・高等専門学校3年生向け(4年次に進級予定)
(※2)学修意欲の確認は、高等専門学校において面談の実施又はレポートの提出等により行います。
(1)では、これまでの成績が5段階評価で3.5以上ないと申し込めないと書かれています。ところが、(2)で「学修意欲を有していればOK」とあり、急に条件が緩和されているようです。
少なくとも申し込み時点では条件は緩やかなようですね。
ただし、申請時点では比較的緩やかに見える成績要件ですが、奨学金採用後、年度末の成績審査で基準以下であれば容赦なく打ち切りとなります。
資産要件を満たしている必要がある
資産要件について
資産額は3億円未満であること
多子世帯の授業料無償化を受けるためには、預貯金や有価証券などの現金資産が3億円未満である必要があります。
こちらは、ほぼ心配いらない要件ですね……。
「無償化される」金額は実際にいくら?
多子世帯の授業料無償化とは、正確に表現するなら「授業料の減免」です。
詳しくみていきましょう。
その前に、給付型奨学金とは
多子世帯の授業料無償化は、日本学生支援機構の給付型奨学金の制度に基づいて行われることをご説明しましたね。
実は、給付型奨学金の中身は「授業料の減免」と「月々の支給(振込)」の2本柱で成り立っています。
- 授業料減免 と
- 給付奨学金の支給(振込)
ややこしいのですが、授業料減免と給付奨学金の支給、この2つを併せて「高等教育の修学支援新制度」と呼んでいます。
この記事でお伝えしている多子世帯の授業料無償化は、このうちの授業料減免の部分の話になります。
申し込みに際しては給付型奨学金を申請することから始まるため、便宜上、「給付型奨学金を申し込んでください」とご案内しています。
2025年度からの授業料減免額(多子世帯)
2025年度からの、授業料減免額や給付型奨学金支給額についてです。
◆ 追加情報 ◆
【2025年度からの授業料減免額&給付月額(多子世帯)】
※高専第4学年以上
高等専門学校 | 国公立 | 私立 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
支援区分 | 入学金減免 | 授業料減免 | 支給額 | 入学金減免 | 授業料減免 | 支給額 |
第Ⅰ区分 (多子世帯) | 84,600 | 234,600 | 17,500 34,200 | 130,000 | 700,000 | 26,700 43,300 |
第Ⅱ区分 (多子世帯) | 84,600 | 234,600 | 11,700 22,800 | 130,000 | 700,000 | 17,800 28,900 |
第Ⅲ区分 (多子世帯) | 84,600 | 234,600 | 5,900 11,400 | 130,000 | 700,000 | 8,900 14,500 |
第Ⅳ区分 (多子世帯) | 84,600 | 234,600 | 4,400 8,600 | 130,000 | 700,000 | 6,700 10,900 |
多子世帯 | 84,600 | 234,600 | ー | 130,000 | 700,000 | ー |
※支給額の上段は自宅通学、下段は自宅外通学の場合の金額
※支給額を受けるための資産要件は5,000万円未満
この表によれば、国公高専の場合は、授業料は年間23万4,600円の減免です。
国立高専の年間の授業料は年間23万4,600円ですから、ぴったり同額、つまり完全に無償化されることになりますね。
ちなみに入学金は、すでに入学して何年も経っているため、通常の高専4年生や5年生は関係ありません。



私も無償化の対象だわ!
ちなみに、多子世帯以外の減免額は以下のようになります。
【参考:多子世帯以外の授業等減免額】
高等専門学校 | 国公立 | 私立 | ||
---|---|---|---|---|
支援区分 | 入学金減免 | 授業料減免 | 入学金減免 | 授業料減免 |
第Ⅰ区分 | 84,600 | 234,600 | 130,000 | 700,000 |
第Ⅱ区分 | 56,400 | 156,400 | 86,700 | 466,700 |
第Ⅲ区分 | 28,200 | 78,200 | 43,400 | 233,400 |
第Ⅳ区分 (理工農計) | ー | ー | 43,400 | 233,400 |
支給額に関係してくる「支援区分」とは
ところで、「このⅠ~Ⅳまでの支援区分って何?」
と思われた方も多いのではないでしょうか。
給付型奨学金は、もともとは住民税非課税世帯かそれに準じる世帯が対象で、毎年マイナンバーによって世帯収入が審査されています。
その審査結果を受けて、世帯収入の大きさによって振り分けられるのがこの「支援区分」です。
決定された支援区分(Ⅰ~Ⅳ)の数字が小さいほど、減免額・給付額ともに大きくなっています。
今回の多子世帯の授業料無償化とは、「多子世帯に限っては、収入要件を撤廃して授業料を減免してあげますよ」、という制度なのです。



難しくてよくわからないよ。
Ⅰ~Ⅳまでの区分に入って、なおかつ多子世帯だったら、月々の支給額も振り込まれるって理解で合ってるよね?



たぶん…。
ウチは3人きょうだいだけど、両親とも働いていて収入は普通。もちろん非課税じゃないわ。授業料は減免になっても、支給額はないってことなのかな?
結論をお伝えすると、家計(世帯収入)が一定の基準を満たさない場合は、「給付金の支給(振込)」を受けることはできません。
ただし、冒頭でもお伝えしているように、収入が多くても、多子世帯であれば「授業料の減免」を受けることができます。
それだけでも、とりあえず安心材料となるのではないでしょうか。
給付額についてさらに知りたい方は、2025年度に入ってから日本学生支援機構ホームページをご覧ください。
〈おまけ〉他のきょうだいに及ぶ影響範囲は?
2025年度からの授業料の無償化は、
「子供を3人以上同時に扶養している間に、大学等に在学している子供が対象となる」ことから、
他のきょうだいも条件に該当すれば、同じように恩恵を受けることができます。
ただし、本人が成績基準を満たしていなければ、せっかく採用された奨学金が打ち切りになることもあります。
同じ多子世帯のご家庭のきょうだいであっても、その学生さんごとに支援が続いたり、逆に打ち切りになったりする可能性もありますから、それぞれがしっかり勉強をする必要があることを認識しておきましょう。
まとめ:今回新たに授業料無償化の対象となる方は、4月以降に忘れずに申請を
2025年度からの授業料無償化を受けるために、日本学生支援機構の給付奨学金を申し込みましょう
すでに給付奨学金を受けている方については、今回の件で自らアクションする必要は特にありません。
万が一何らかの手続きの必要性がある場合は、学校から個別に案内があるはずです。
しかし、これまで給付型奨学金の対象ではなかった多子世帯のご家庭の学生さんは、新たに授業料無償化の対象となりますので、忘れずに自ら申請するようにしてください。
おそらく、ほとんどの学校では春頃にプリントや配布物によって申請の案内があると思います。
学生の皆さんは、配布物を必ず家に持ち帰り、保護者の方に見せるようにしてください。また、保護者の方は春頃には注意して、確認してあげてください。
学費の心配が減ることで、さらに次の進学への意欲や展望が見えてくるかもしれません。